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夜行百モノカタリ

~月見月の百鬼夜行私的考察ブログ~

   

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山童(やまわらわ)Yamawarawa





安永5年(1776年)に刊行された
鳥山石燕の妖怪画集「画図百鬼夜行」「前篇陰」の山童です。















こちらが
画図百鬼夜行に描かれた石燕の山童





さて、wikipediaでは
山童(やまわろ、やまわらわ)
九州を始めとする西日本地方に伝わる童子姿の妖怪。河童が変化したもので、山間部に棲むといわれる。 また、これとは別に同音語の山わろという妖怪もある。
姿は10歳程度の童子のようで、頭には柿褐色の長い頭髪を生やし、全身が細かい毛に覆われている。胴は短く、2本の長い脚で直立して歩き、人の言葉を話すとされる。

とあり、石燕の山童を見ると頭髪や全身細かい毛に覆われているなどは確かにその通り。ですが10歳程度の童子には見えません・・・どう見ても親爺です。

また、三重県を除く西日本では、河童が山に移り住んで姿を変えたものが山童だといわれており、特に秋の彼岸に河童が山に入って山童となり、春の彼岸には川に戻って河童になるとする伝承が多い。

河童にしては水かきが見当たらないのは何故でしょうか・・・頭頂部は皿のようにも見えますが。

さらに・・・
宮崎県の西米良地方では、セコが夕方に山に入り、朝になると川に戻るという。熊本県南部ではガラッパが彼岸に山に入って山童になり、春の彼岸に川に戻ってガラッパになるという。このような河童と山童の去来を、田の神と山の神の季節ごとの去来、さらには夏季と冬季に二分される日本の季節に対応しているとする見方もある。

どうも九州地方の山童とは違うように思います。
これとは別に同音語の「山わろ」という妖怪もいるということで、そちらも調べてみました。

山わろ(やまわろ)は、日本の中部地方に伝わる妖怪。同じ発音の山童とは異なる。

木曽(長野県)の深い山の中に住んでいる大男で、エビやカニを捕らえて餌にするといい、人間のようにこれらを火で焼いて食べるともいう。
江戸時代の百科事典『和漢三才図会』には、中国の書『神異経』からの引用で、山わろを中国西方の深山に住む人種と述べており、身長は約一丈、同様にエビやカニを捕らえて焼いて食べるとある。このような食習慣や、殺めた人間が病気になるといった記述は、同じく『和漢三才図会』にある中国の妖怪・山精にも同様の記述が見られる。
「和漢三才図会」山わろ

さらに
飛騨地域(岐阜県)では、大きいのを「山男」と呼び、小さいのを「山わろ」と区別しており、ワロは和郎の意味と考えられている。やはり、万が一これらに一発の銃弾を与えるようなものであれば、熱病、その他の恐るべき祟りをこうむって一家は根絶やしになると信じられており、復讐を恐れて山間の村人は口に出す(話題にする)ことが少なかったとされる。猿の如く素早く影を見つけるのも至難であると語られている。
岐阜県では、わろの正体の一説に、飛騨判官朝高(藤原姓)が捕虜として引き連れ、山奥に脱走した蒙古兵の集団という。

蒙古兵の集団かどうかは別にして、石燕の山童はこちらの「山わろ」に近いように思えます。でも山童(わらわ)なんですよね・・・ただの方言なのでしょうか?



江戸中期の画家佐脇嵩之の「百怪図巻」には、山わらうという10歳程度の童子のような山童が描かれている。





ちなみに、1841年(天保12年)に刊行された日本の奇談集「絵本百物語」に山男という画があります。
竹原春泉画『絵本百物語』より「山男」

北陸地方の奇談集『北越奇談』にも、人間と山男の交流の記述があり、どちらも描かれている山男は石燕の「山童」に似ているのです。
「北越奇談」より「山男衆人に交(まじわり)てよく人語を解す」。葛飾北斎画

この山男の正体については、前述の「絵本百物語」では山の気が人の形をとったものともあるが、妖怪研究家・多田克己は、江戸時代の百科事典「和漢三才図会」にある山わろ、玃、山精、魍魎などが混同された結果として生まれたのではないか。また、ヒマラヤ山脈の雪男(イエティ)と同様、絶滅種類人猿のギガントピテクスの生き残りとの仮説も立てている。妖怪研究家・村上健司によれば山姫(山女)と同様、普通の人間が精神に異常を来たして山男となった例も少なくなかったとされる。とありました。

江戸時代、石燕という浮世絵師が山童という妖怪を風聞で知り、あるいは聞きつけ、それを描くときに、何を題材とし、何を思い、何を伝えようとしたのか・・・これまで上述してきた民間の伝承に加え、諸外国の書物や過去の文献を紐解き石燕独自の「山童」を描いたことは確かでしょう。しかしそれだけでは月見月は納得できません。百鬼となりはて夜行するに至る理由が必ずあったはずだと考えるからです。

気になるのは山岳信仰に密接に絡みついてくる修験道と山伏。
そして「山窩」と呼ばれた人々・・・

ここで少し「山窩」について見てみます。

サンカは、日本の山地や里周辺部で過去に見られたとされる不特定の人びとを指す言葉である。その言葉が指し示す範囲は、時代や使用者によって大きく変わり、語義を明確にすることは難しい。(wikipedia抜粋)

サンカ(山窩)と云う呼び名は、あくまでも外部からの呼称であり、近代(明治以降)になってから官憲用語として使われ始め、一般で使われるようになったようです。明治以前にもサンカと呼んでいた地方があったようで、地方により箕作り・箕直し・テンバモン・オゲ・ポン・カワラコジキ・などと呼ばれていました。自らはサンカと呼ばれることを嫌いショケンシ(世間師)・ケンシ・ヤコモンなどと称しており、山窩と云う言葉の持つイメージには、ネガティブ(犯罪者集団など)で差別的なものがあり、実体をあらわしたものではなく、アメリカにおいてインディアンの呼び名がネイティブアメリカンと呼ばれるように、本来は原日本人と呼ぶべきかもしれません。

サンカの源流と起源 

古代難民説
サンカ(山人)は、原日本人(あるいは縄文人)であり、ヤマト王権により山間部に追いやられた異民族であるとする説。柳田國男の山人論に基くが、柳田はサンカと山人を区別して記述している。また山人の起源に関する考察は、南方熊楠に私信において否定され、柳田もそれに積極的には反論していない。根拠に乏しい仮説であり、現在ではこれを主張する研究者を探すことは難しいが、俗説として広く信じられている

中世難民説
動乱の続いた室町時代(南北朝、戦国時代)の遊芸民、職能集団を源とする仮説。起源を比較的古くまで求めることが可能な言葉である「三家」、「三界」、「坂の者」などを根拠とする。喜田貞吉の研究が代表的である。語源を探る上で説得力を持つが、江戸時代末期の中国地方の文書にあらわれた「サンカ」との因果を検証することが困難である。

近世難民説
江戸時代末期の飢饉から明治維新の混乱までの間に山間部に避難した人びとが多数を占めるであろうという考察。サンカに関する記述が、近世末になって、天保の大飢饉が最も苛酷であった中国地方で登場することから、沖浦和光が主張している。

上記のように、起源については定かではありませんが、何れにしても山深い奥地でひっそりと暮らす人々がいたことは確かなようです。村人がこの人たちを気味悪く思い、町人が面白半分に妖怪化させたのかも知れません。空想ついでに、突拍子もないことですが、渡来人の可能性も捨て切れません。なんとなくその背後に秦一族や徐福がいるような気がします・・・そこまでは追求しませんが^^:

月見月には、子供から大人まで、男女を含め、山間部に住まう人々が、ある時は天狗になり山姥そして山童や木魅になる。出遭った場所や時代などにより語る人も様々で、名も様変わりするのではないかとみています。
そして平地ではなく山を選んだ。しかも山奥・・・いや山に隠れ住まわなければならない理由があったと見るべきでしょうか。人里を避け、一族だけで暮らさなければならなかった虐げられた恨みは、鬼と化すに十分。
石燕の筆によって息を吹き込まれ、蘇った山の妖怪たちは、積年の恨みを百鬼と共に夜行したのでしょう。

最後に
明治以降の隠語解説文献や辞典に「山妾」と書いて「やまわらわ」と読み、その意味が「淫慾の旺盛なる女のことをいふ。」とありました。山の妾(めかけ)・・・
また石燕はどうして山童の目をひとつにしたのか。に触れなかったのは、あまりにも辛いところに辿りつきそうだったので止めました。

次回は山から離れて犬神(いぬがみ) と白児(しらちご)です。
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